小松というところは、食に関しては保守的な街です。意外に新しいお店が育たない土地だと思います。特に「洋」のジャンルでは顕著です。
そんな小松の街では、いままでは考えられなかった新しいお店が8月にオープンしました。場所は吉竹町で憩いの森にも近い場所にあります。
小松は40年ほど前までは撚糸業が盛んな土地で、至るところに撚糸工場が存在していました。お店自体も元々ここにあった撚糸工場をリノベーションしているのですが、これまた素晴らしい空間に変身させているのです。
オーナーシェフの米田ご夫妻に、撚糸工場をレストランで利用するという経緯をお聞きしましたが、ここでは書かないでおきます。
ほんの少しだけ書くとすれば、「撚糸の過程で糸を何本も合わせて撚り、新たな糸を作るように、これまで経験してきた様々なエッセンスを、あたかも撚糸の糸のように組み合わせていくことで、ここ石川でしか表現できない料理を創造していきたいという思いを込めたものです。」という想いからオープンさせたということでした。
そこで、お店も「YArn」、つまり「紡績糸,織り糸,編み糸」の意味の店名にしたようです。
お店の場所については、小松にこだわったわけではないということですが、石川県にはこだわりがあると話されていました。
敷地は広く、外観からはレストランだとは気が付きません。小松の石材「日華石」の塀垣に「SHOKUDO YArn」と書かれていますが、よく見ないとわからないですね。
店内にもおなじ日華石が使われていましたが、この内側はワインセラーになっていました。日華石は温度管理にも適しています。
中に入ると目の前に、このような木が現れます。
これは樹齢200年のオリーブの木だそうで、スペインから直接取り寄せたようです。中庭のシンボルツリーの位置付けですね。オーナー夫妻は、このオリーブの木のお迎えにわざわざ名古屋港まで行ったそうです。
我々がお邪魔したのはランチでしたが、お値段は3千円と6千円(税サービス料別)の2種類のみで完全予約制になっています。ちなみに夜は同じく税サービス料別で8千円と1万3千円のコースとなっています。(現在は値段が変更になっています)
実は行く前は、何と高い値段だ!と思っていました。そのため、この値段では小松のような地方都市では難しいんではないだろうか?とも考えていました。
ところが、最後まで料理を楽しんだ上での結論は「素敵なお店だ」に変わっていました。もっとも、このような感想は個人的な好みの範疇の問題ですから、人によっては当然違う気持ちになるでしょうが、私にとってはいい意味で予想を大きく超えていましたね!?サプライズの数々で大いに楽しませてくれました。
内装、使われる食器や食材へのこだわりも半端じゃなかったです。料理に使う水も「平成の名水百選」に認定されている能美市の仏大寺の遣水観音霊水を、わざわざ汲みに行き使っているほどなのです。
そして、家具や食器類、小物やおしぼりに至るまでオリジナルで、オーナー夫妻のこだわりが感じられます。料理や小物類にまでお店の名前の「YArn」の文字が刻印されています。ただ、ナプキンだけは紙製でした(笑い)。ランチだったから?
オーナーシェフの米田さんは、スペインやイタリアの星付き有名レストランで腕を磨き、帰国後は小松市内の有名店「つづら」の調理長をつとめた方で、ご夫婦とも私と同じ高校出身でした。ちなみに、いまは閉店していますが、スペインの超有名3つ星レストラン「エル・ブジ(El Bulli)」でも働いていたことがあります。彼の料理のエッセンスは、このエル・ブジの時の経験がいきているのではないでしょうか?
我々は、まず最初の訪問は一番ベーシックなコースということで3千円のコースにしました。(予約時に連絡)
まず出された「きなうりソルベット」に、まず驚かされます。
ノンアルコールのスパークリングを、お店の名前が入った抹茶椀のようなものに注がれて完成させます。お抹茶に見立てたものでしょう。器にもお店の名前が入っていますね。
そして、一緒に出された「ハモン・イベリコ・デ・ベジョータ」。44か月熟成された生ハムです。この生ハムを口に入れ先ほどの「きなうりソルベット」を飲むと、とあるフルーツの味に変わります。不思議でした。
添えられている箸は能登ヒバの香り箸で、いい香りです。これは食べ終わった後、用意してくれる袋に入れて持ち帰りが出来ます。
こちらは「気になる能美産ポルチーニと中島菜苔」というネーミングで、流木でしょうか?そんな器?に乗せられて出されます。
単純に調理されているわけではないのですが、いろいろ説明をお聞きしましたが写真を撮っていたために、あまり耳に入りませんでした。覚えていません。^^; お店に行って実際にお楽しみください。(笑い)
お次には、このような袋が出されました。
中には、深緑色の一見すると海苔のようなものが入っています。
これは「Schiacciatina al Yomogi(スキアッチャティーナ・アル・ヨモギ)」です。スキアッチャティーナとはミニフォカッチャのような意味あいのもので、ようはヨモギをフォカッチャの生地を作るように、イタリア産の強力粉とオリーブオイル、遣水観音霊水を混ぜ、平らに伸ばして焼きあげたものです。
ご覧の最中のようなものは「加賀イノシシ最中」という料理?
で、中にはご覧のような猪肉を使ったトスカーナ風のパテが詰められているのですが、臭みがまったくなく私でも食べられました。
こちらもメニューには単に「肉じゃが(ただしアルファベットで表記)」と書かれていましたが、和食の肉じゃがとは大違いで、写真でもジャガイモのように見えるものも、単純にジャガイモをそのまま使っているわけではありませんでした。
少し食べた後で、ご覧のようにシェフが味噌を使ったドライソースをかけてくれますが、これで味が大きく変わります。へぇ~!?ってな感じですが、なかなか文章で表現するのは難しいです。^^; こちらも食べてみてのお楽しみということにしておきましょう!
これは「小豆島オリーブそうめん 小松のトマト」。こちらではほとんどが自家製なのですが、このオリーブそうめんは小豆島産を使っています。
トマトの北陸一の産地である小松産のトマトがつけ汁に使われています。さっぱりとした味でした。
こちらの「美川漁港柳鰆に有機金糸瓜パンテレリア産ケッパー」は、脂ののった柳鰆の上には赤土の有機栽培で育てられた金糸瓜が乗せられています。ニラの花もちりばめられていました。
ちなみに、白ワインは妻の口の中に消えました。
パンは熱々でした。
お代わりでフランスパンも。
デザートは「スイカバー2015」と名付けられた一品で、これが素晴らしい芸術品でした。夏のスイカ割をイメージしたそうで、思わず笑いが出ますね。
後ろ側はこんな感じになっています。皮は当然ですが、タネまでチョコで作ってあります。手がこんでいます。もちろん、ちゃんとアイスクリームはスイカの味がしましたよ。
飲み物は有機JASフェアトレードのグアテマラ産コーヒー豆を使ったエスプレッソコーヒー。
カップは九谷焼の白地でフタが付いていて取っ手が付いていない中国茶を飲むような形状で珍しいカップです。エスプレッソの香りも楽しめます。
すべて食べ終わった後、調理場を少し見せてもらいました。ガラスはありますがオープンキッチンのように、作っている様子を覗き見ることができます。調理用にダウンライトが設置されていました。劇場のダウンライトのように料理を照らし出していました。
石川県の食材が半分以上を占めていて地産地消にこだわっているようで、何とも贅沢なランチ。食べるのに1時間半以上かかりましたが時間が経つのも忘れるほど楽しめたランチでした。
スペイン・フランス・イタリア・日本が融合したとも感じさせてくれる料理は、一度食べてみる価値はあります。小松の人が「SHOKUDO YArn」の料理をどう感じるか、聞いてみたいですね。
次回は夜に訪れたいものです。皆さんも是非どうぞ!
SHOKUDO YArn (HPはこちら)
小松市吉竹町1-37-1
TEL 0761-58-1058
Lunch12:00~15:00(13:00 L.O.)
Dinner18:00~(19:30 L.O.)
日曜日と月曜の昼休
ただし第三日曜日の昼は営業、その翌日の月曜は全日休み。その翌日の火曜日は昼休業
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