さて、お待たせしました。今回は西日本各地の「うどん」について書いてみたい。
個人的にも蕎麦よりはうどんのほうが好きなことは、過去にも何度も書いている。
私の生まれ育った石川県小松市もうどんが名物だったし、その後、京都・福岡・大阪など西日本に住むことが多かったせいもあり、各地で美味しいうどんを食べた結果、そうなったのかもしれない?
うどんとは、小麦粉を練って長く切った、もしくは延ばした、ある程度の幅と太さを持つ麺のことである。ただ、冷麦やそうめんなども同じ小麦粉から作られる麺類であり同じ仲間である。
うどんの誕生には諸説あるようだが、福岡の承天寺というお寺の境内には「饂飩蕎麦発祥之地」と記された石碑が建っているため、福岡市が発祥ではないかといわれている。
同じ麺類でも、一般的には西日本は「うどん」。東日本は「蕎麦」と言われているが、日本三大うどんといえば、西日本では讃岐(香川県)一ヶ所のみ入っていて、東は稲庭(秋田)と水沢(群馬)の二ヶ所入っているというのも面白い。
一応、関西を中心とする地方から西日本に広がったのは昆布の出汁文化であり、その出汁を吸わせて、うどんとともに出汁を味わうといったことから、うどんのほうが好まれたのではないかと言われている。そのため、うどんといえばコシがあるよりも柔らかい出汁を吸ううどんのほうが好まれたのである。
さて、そんな西日本の都市でも「うどん」を名物としてうたっているところを何ヶ所か紹介したい。
まずは、「うどん県」として有名な、この場所を最初に書かないわけにはいかないだろう!
香川県の「讃岐うどん」である。私も何度も香川県には出張などで行ったことがあり、そのたびに必ず一回以上はうどんを食べたものである。
後述する西日本のうどんが有名な土地でも、讃岐うどんをウリにしているお店が相当な割合で存在しているようだが、今日のところは、讃岐うどんの紹介以外では、そのようなお店は除いてあることをあらかじめお断りしておく。
写真は、讃岐うどん発祥の「釜たま」。そのまた、こちらのお店が「釜たま」発祥と言われている「山越うどん」で食べたもの。讃岐うどんを全国的に有名にした「讃岐うどん巡礼88箇所」の第一回目のリストの一番最初に出てくるお店が「山越うどん」である。一日約1000食売れるという人気のセルフうどん店なのである。何と!駐車場も200台停められるスペースがあるというから驚きである。
釜揚げなので、本来の讃岐うどんのコシではないが、弾力が凄くて、玉子でコーティングされたうどんが黄金のような輝きである。これが旨かった!さすがの味だった。
讃岐うどんの場合は、湯掻いたあと冷水で締めて、そのままつゆや醤油をかけて食べることが多いが、冷水で締めたうどんに冷たいつゆをかける「ひやひや」や、冷水で締めたうどんに熱い(温かい)つゆをかけて食べる「ひやあつ」。冷水で締めたうどんをもう一度温めなおして、さらに熱い(温かい)つゆをかけて食べる「あつあつ」などのバリエーションがある。
写真は「ひやひや」が有名なお店「あたりや」の「ひやひや」である。
なお、湯掻いたままをそのまま出すのを「釜揚げ」と呼び、こちらも寒い冬などに人気である。写真は「釜揚げうどん」のお店「わら家」のもの。大人数だとたらいを器として出される「釜あげ特大」がおすすめ?
何れにせよ香川県の人は本当にうどんが好きで、毎日必ず一杯は食べるという人が多い。そのためうどんの消費量も圧倒的に全国No.1で、うどん一杯の値段も半端じゃないほど安く食べられるのがうれしい。
福岡は先ほども「うどん」発祥の地と書いたが、西日本の中でもいちばん柔らかいうどん(博多では「うろん」と呼ぶ)を食べさせてくれる土地である。つまり出汁を一杯吸っているので美味しいのかもしれない。
タモリさんも「博多のうどんに、コシはいらない」と言っていた。
博多のうどんで名物は「ごぼ天」と「丸天」うどんである。「ごぼ天」とはゴボウの天ぷらうどんで、「丸天」とは練り物を丸い形に揚げたものが乗せられているうどんである。
写真は福岡西区の「大地のうどん」で食べた「ごぼ天うどん」。ごぼう天がびっくりの大きさである。また、海苔、削り節、大根おろし、ネギ、ショウガがたっぷり乗せられている。それに、カツオと昆布の利いたダシをぶっかけて食べるのだが、これがうまい。ビジュアル的にもいい。
「丸天」うどんは「かろのうろん」で食べたもの。博多弁では「ど」は「ろ」というらしい。つまり「かろのうろん」は「角のうどん」ということで、読んで字のとおり、道の角にあるうどん屋さんという意味である。
お次は大阪(関西)だが、大阪のうどんは福岡ほどではないが、やはり柔らかく、どちらかといえば麺を食べた感じや出汁の味など、小松うどんに似ているだろう。
大阪で有名なのは「きつねうどん」で、ご存知、油揚げが乗せられているうどんである。ここは、その「きつねうどん」発祥のお店である「うさみ亭マツバヤ」で食べたもの。甘辛く煮てある油揚げに出汁がしゅんでいて美味しい。
大阪(関西)では、「きつねうどん」は一枚の甘辛く煮た油揚げを乗せるが、一方、油揚げを刻んで、煮ずにそのまま乗せるのが「きざみうどん」である。大阪では出汁文化のため、出汁の旨さを味わえる「きざみうどん」のほうがある意味人気がある。関東のうどんにはないメニューである。
写真は梅田にある「つるつる庵」の「きざみうどん」。
大阪では、うどんを使った鍋も進化している。こちらは、大阪本町「美々卯 本店」は「うどんすき」の商標登録を持つ老舗で、私も2度ほど食べに出かけたことがあるが、うどんよりも鍋料理としての位置付けのほうが大きいかもしれない。
普通、鍋料理というものは、魚介や具材から先に入れるものだが、こちらのお店ではうどんから鍋に入れる。
うどんは伸びたら美味しくないというイメージがあるが、当然、うどんすき専用のうどんなようで、もちろん時間が経っても伸びない。煮込んだほうが美味しくなるように作られている。
お次は氷見うどん。氷見うどんは、日本三大うどんのひとつ、秋田の稲庭うどんと同じく手延べで打つうどんである。讃岐では包丁で切り落としエッヂのきいたうどんのようが好まれるが、手延べの場合は切らないので、のど越しが滑らかなうどんになる。写真は東京神保町で氷見うどんを食べさせてくれる「富山氷見手延うどん 開元」のランチの一品で出された氷見うどんである。
小松うどんについては、何度も書いているが、かの松尾芭蕉が奥の細道の道中に、山中温泉まで行っていながらわざわざ小松までうどんを食べに戻ってきたという逸話まで残っているほどである。
ちなみに昨年9月末に滋賀県東近江市で開催された「第2回全国ご当地うどんサミット」で見事日本一に輝いたのが小松うどんなのである。
グランプリを取ったときのメニュー「肉うどん」。写真は、「小松うどん道場 つるっと」の肉うどんである。本番では能登牛が使われているが、能登牛だと値段が高いので普段は違う肉が使われているのだろう?
これは、芭蕉も立ち寄って俳句を読んだ多太神社の近くにある「つえ村南店」の「かぶとうどん」。芭蕉が多太神社に奉納されている実盛の兜を見て詠んだ句。「むざんやな 甲の下の きりぎりす」にちなんだうどんで、おでん種でもある「餅巾着」が具材として使われている。たぶん「餅巾着」をかぶとに見立てているのではないかと思う。
京都のうどんにも触れておきたい。
京都にも色々特徴のあるうどんを食べさせてくれるところがある。写真の「ねぎうどん」は、メディアでもよく取り上げられる祇園のうどん屋さん「祇をん 萬屋」のものである。祇園の舞妓さん、芸妓さん、南座で興行する歌舞伎役者にも人気のお店のようだ。
西日本の最後は伊勢うどんである。このうどんは伊勢神宮の門前うどんの位置付けで、名古屋の味噌文化とも微妙な交わりを経てきている。「たまり醤油に鰹節やいりこ、昆布等の出汁を加えた、黒く濃厚なつゆ(タレ)を、太い緬に絡めて食べる。」のが伊勢うどんで、甘辛い。うどんは超極太という特徴がある。
門前うどんについて書いたところで、もう一軒、京都の北野天満宮の近くにあるたった一本だけ太いうどんが入っている、変わったうどん「一本うどん」を食べさせてくれる「たわらや」を紹介しておく。本当に一本だけのうどんであり、驚かされる。具材はショウガのみというシンプルさ。さすがに太い!でも、うどんそのものの味がストレートに口の中に入ってくる。
西日本ではないが、番外編として秋田の稲庭うどんと愛知県のきしめんについても紹介したい。
実は私は日本全国で足を踏み入れたことがない(一応、他の都道府県は全てちゃんと二本足で降り立っている)のが秋田県である。その秋田県の南のほうの稲庭地区のうどんの総称が「稲庭うどん」である。
行ったことがないので、本場にあるお店を紹介するわけにはいかないが、こちらは福岡に住んでいるときに行った、秋田に本店がある「七代 佐藤養助」というお店で食べた「梅おぼろ」うどん。玉子焼き、おぼろ昆布、なめこ、大葉、そして梅肉など乗せられている。出汁はあくまで上品で、そうめん汁のような感じであった。
名古屋のきしめんも全国的に有名なうどんの一つである。この名古屋より東では昆布よりもかつお出汁のほうが強くなる。このように平らな形状のうどんになったのは、たぶんに名古屋の食文化の影響も受けているのだろう?
こちらは、「きしめん よしだ エスカ店」のオーソドックスなきしめんは美味しかった。
人気のお店で、平日でも11時過ぎから混みだし、11時半前には満席になることも多い。この内容については、後日詳しく書きたい。
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