酒蔵で出来たての酒を飲むのは至高のひと時・・
さて、年も明けたので、新年企画(笑い)として、「お勧めのお店・旅館」でも紹介しているところを中心に、私の好きなお店について触れていきたいと思う。記念すべき第一回目は、毎年、春と秋の二回、小松の東酒造という酒蔵で、仲間が酒を飲む会について書くことにする。
春は「あらばしりの会」といい、出来たての酒を飲む会で、いわば日本酒のボージョレ・ヌーボーである。
秋は「呑みきりの会」といい、ひと夏越して格段にまろやかに旨くなった酒を、秋の味覚とともに味わうのである。
以下、春の「あらばしりの会」の様子を私が書いた文章があるので、少し編集してここに転載する。(3年前まで私が世話役をやっていたので)
東酒造は、小松市の北に位置している。今から330年も昔の万延年間に創業した由緒ある蔵で、現在の年間生産量は400石。たぶん日本でも小さな部類に入る酒蔵である。しかし、この小ささこそがご主人の酒造りに対してのごだわりのあらわれでもある。
ご主人曰く、酒造りとは「桶に耳を当てて酵母の声を聞き、寒いと言えば暖めてやる、熱いと言えば冷してやる、といったようにまさに手作りに近い形が望ましいのです。古来から伝えられてきた酒造りが、技術革新の名の元に、私から見れば少し変わった酒がドンドン造られて、結果として需要が減退しているのではないでしょうか?」というほど、美味しい酒を造ることにこだわりを持っているのである。確かに近年日本酒の消費が年々落ち込んでいることは、単に酒の種類が増えて消費者の嗜好の多様化という理由だけではないと思う。また酒蔵が大きくなればなるほど、マスを考えた酒造りにしないと企業としての採算がとれないことも事実である。東酒造はそんな時代に流れに逆らうかのように昔ながらの酒造りとその味にこだわっているのである。
春は、ちょうど白山の雪解けが始まるか始まらないかという頃、3月に「あらばしりの会」が開かれる。「あらばしり」とは醪(もろみ)を酒袋に詰めて、最初に滴れてくる白く濁った清酒。この時期だけ、しかも決まった量しか味わえないお酒である。宴の始まりはまず中蔵の中央にしつらえられた机に無造作におかれた茶碗で、まず管を伝ってぽたぽたと滴る新酒の音を聞きながら、純米吟醸酒の「たれくち」を堪能。東酒蔵の将来の五代目当主が、参加者の質問に答えながら、次々に各人の茶碗に柄杓で注いでいく。ご当地米の五百万石で作られるこのお酒は、前日から搾り始めた生酒。アルコールは一切添加せず、米と水だけで造られた、かなり個性的な風味のお酒で、アルコール度はほぼ19度。舌にぴりっとくる一種濃厚な生まれたての酒の味に、酒好きの諸氏は何度も樽の側に足を運んだようだ。
その後座敷にて始まった宴。酒樽のふたの半分を使った食膳に並んだのは、山海の幸を用いた家庭料理、旬の山菜料理、それに日本海で取れた魚介類を用いたにぎり寿司(もちろん志の助)。
ここに「しぼりたて たれくち」と「神泉大吟醸」の瓶が並べば、もうあとは何も要らない。過去と現在が不思議に交ざりあう東酒蔵の弥生の夜を、“胃”も心も満たされた人々は、心ゆくまで楽しむのであった。
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